鍼灸が何に対して効果があるのか。
そのことを事前に調べる方も多いと思うのですが、来院してから「こんな症状には効きますか?」という質問を受けることが多々あります。
その中には不妊症に対して鍼灸が有効であることを知らない方がいたり、肩こり、腰痛の他にはあまり効果がないと思っている方もいます。
皆さんはWHO(世界保健機関)をご存じでしょうか?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行しはじめた頃にその名称を知った方もいることだと思いますが、この機関において1979年に北京でおこなわれた「鍼灸に関するWHO地域間セミナー」で鍼治療が有効と主張された疾患群の暫定リストが作成されました。
このセミナーで合意が得られた疾患数は30疾患でしたが、その後に48疾患にまで膨れあがったといいます。
①上気道4疾患 急性副鼻腔炎・急性鼻炎・感冒・急性扁桃炎 ②呼吸器系3疾患 急性気管支炎・小児気管支喘息および気管支喘息(合併症のない患者に最も有効) ③目の障害4疾患 急性結膜炎・中心性網膜炎・小児の近視・合併症のない白内障④口の障害5疾患 歯痛・抜歯後の疼痛・歯肉炎・急性咽頭炎および慢性咽頭炎 ⑤胃腸障害15疾患 食道痙攣および噴門痙攣・しゃっくり・胃下垂・急性胃炎および慢性胃炎・胃酸過多・慢性十二指腸潰瘍(疼痛の緩和)・合併症のない急性十二指腸潰瘍・急性腸炎および慢性腸炎・急性細菌性赤痢・便秘・下痢・麻痺性イレウス ⑥神経系および筋骨格障害17疾患 |
効果についてはWHOだけが紹介しているのではなく、1997年、米国・国立衛生研究所または国立保健研究所(NIH)は、「鍼治療に関する合意のためのパネル会議を開催して鍼の有効性や安全性、研究方法など合意されました。
これに拠れば、成人の術後および化学療法による嘔き気・嘔吐・歯科の術後痛・妊娠悪阻の3疾患には「鍼治療が有望である」とされ、薬物中毒・脳卒中のリハビリテーション・頭痛・月経痛・テニス肘・線維筋痛症・筋筋膜痛・変形性関節症・腰痛・手根管症候群・喘息の11疾患については「補助療法として有用、または包括的患者管理計画に含める可能性がある」とされています。
①神経系疾患 神経痛・神経麻痺・痙攣・脳卒中後遺症・自律神経失調症・頭痛・めまい・不眠・神経症・ノイローゼ・ヒステリー ②運動器系疾患 関節炎・リウマチ・頸肩腕症候群・頚椎捻挫後遺症・五十肩・腱鞘炎・腰痛・外傷の後遺症(骨折、打撲、むちうち、捻挫)③呼吸器系疾患 気管支炎・喘息・風邪および予防 ④消化器系疾患 胃腸病(胃炎・消化不良・胃下垂・胃酸過多・下痢・便秘)・胆嚢炎・肝機能障害・肝炎・胃十二指腸潰瘍・痔疾⑤代謝内分泌系疾患 バセドウ氏病・糖尿病・痛風・脚気・貧血 ⑥生殖、泌尿器系疾患 ⑦婦人科疾患 ⑧耳鼻咽喉科系疾患 ⑨眼科系疾患 ⑩小児科系疾患 |
鍼灸は整骨院とは異なり保険診療がすぐに適応されません。
一定の要件を満たす場合に「療養費」として健康保険の対象となります。
①神経痛 ②リウマチ ③五十肩 ④頸肩腕症候群 ⑤腰痛症 ⑥頚椎捻挫後遺症などの慢性疼痛疾患 |
これらの対象となる傷病に限り、医師が施術に同意した場合のも健康保険での施術が可能です。
「通っていた整骨院では保険が使えた」という話を聞きますが、上記のように医師が同意しない限りは保険適応はされません。
また同意診断書に書かれた病名・症状で病院・整骨院での治療は認められていません。鍼灸治療を受けている期間に病院や整骨院と併用してしまうと治療費の清算が必要になります。
これまでWHO(世界保健機関)、米国・国立衛生研究所または国立保健研究所(NIH)、日本での健康保険が適応される疾患をあげてきましたが、治療効果は「科学根拠があり、西洋医学の代替え治療として有効である」ということが分かっています。
国内での鍼灸の研究は以下の施設でおこなわれており、大学病院でも鍼灸治療がおこなわれています。
・北里大学東洋医学総合研究所 ・東京女子医科大学東洋医学研究所 ・明治国際医療大学 ・東京有明医療大学 ・森ノ宮医療大学 ・東京大学 ・近畿大学 ・東京大学 ・慶応大学 ・千葉大学 ・北里大学 ・東京慈恵会医科大学 ・東北大学 ・大阪大学 ・筑波大学 ・三重大学 ・岐阜大学 ・京都府立医科大学 ・日本医科大学 ・自治医科大学 ・東京女子医大 ・東海大学 ・東邦大学 ・埼玉医科大学 ・大阪医科大学 ・近畿大学 ・有明国際医療大学 ・明治国際医療大学 ・福岡大学 |
さらに詳しい効果については、公益社団法人東京都鍼灸師会の『科学も認めるはりのチカラ』をご覧ください。
この記事をまとめるにあたり、2010年に新潮社から出版された『代替医療のトリック』では鍼、灸、カイロプラクティック、ホメオパシー、ハーブ療法について紹介されていますが、鍼に効果があるとする証拠は見出せなかったとあり、プラセボであると紹介されています。
医師によって「鍼灸や漢方は効果がない」と発言する方がいますが、その理由は医学部で鍼の講義はおこなわれず、効果という部分において的確に答えることができないからと紹介されていました。
ある医師会の講演会で漢方薬の有効であった症例を話したところ、「2000年も前のクスリを使っているのは理解できない」と質問されたそうです。
そのことに対して著者は「人体に、ある種の病原菌やウイルスが感染した場合の生体防御の仕組みは、2000年前と今とでは変わっているでしょうか?」と質問したそうですが、鍼灸によるメカニズムは解明しきれているわけではないものの、とても単純ではあります。
それは傷をつけることによる再生です。
私は卒論で「植物に対する鍼の効果」をまとめましたが、鍼を刺していない250本の人参、鍼を刺した250本の人参では、鍼を刺した250本の人参の方が成長が早いことが分かりました。
鍼灸の効果については、プラセボというものも1つの効果に入ることだと思いますが、人参という心情をもたない物質に対して効果があるということは、鍼灸が有効であることが分かります。
人間は目が2つ、耳が2つ、心臓が1つということ自体は2000年前から変わっていないため、鍼灸や漢方が現代では効果がないということはあり得ないのですが、生活様式などは異なるため、先進国と後進国の人とでは効果(変化量)に差が生じるでしょう。
日本において鍼灸は飛鳥時代からおこなわれていた医療制度であり、明治維新までは正統医学として存在してきました。
しかし西洋化による富国強兵の施策によって医療制度外の位置づけとなり、明治後期から大正時代まで30年間は断絶・暗黒時期を経て、日本の伝統医学研究レベルは300年ほど後退したといわれています。
鍼灸は効果ある?ない?
この疑問はどなたでも気になる部分ですが、鍼灸は日本で6世紀の仏教伝来と前後する中国学芸との本格的接触依頼、現在まで約1500年にわたり学び続けられているものです。
興味を抱いている方はぜひご来院ください。
人間がもつ力を活用する鍼灸や漢方はあなたにとって有益なものになります。
参考資料
・第10回『WHO(世界保健機関)が定めた鍼灸の適応症』〈赤門教職員コラムリレー〉 2019年8月30日
・全国健康保険協会『はり・きゅう、あん摩・マッサージのかかり方』
・『和漢診療学 新しい漢方』著者:寺澤捷年 発行所:岩波書店
・『現代中医鍼灸学の形成に与えられた日本の貢献』著者:真柳 誠(茨木大学人文学部 大学院人文学研究科)
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