「時代の変遷を迎えて未病という生き方を選ぶ」というと何だか大げさに聞こえますが、実際に日本医療の最大の問題は国民医療費が毎年1兆円増え続けているそうです。
2025年には団塊の世代が75歳以上になり日本は超高齢社会に突入します。
厚生労働省の予測しては2025年の国民医療費は60兆円を超えると言われています。
ただし、新型コロナウイルスの流行もあるため、これはあくまでも予測。
大幅に増えることもあるでしょうし、少なくなることもあるでしょう。
今わかっていることはこのまま国民医療費が上がり続けると、それをカバーする方法は国民負担を増やすか医療費を削減するしかないということ。
厚生労働省「平成23年度 国民医療費の概況」によると、医療診療医療費に占める生活習慣病の割合は全体の約3分1(約9.8兆円)を占めており、完治が困難で多額の治療費を必要とする場合も多く、医療費増大の要因の1つとなっています。
これらの生活習慣病は、若年期からの運動や食事などの生活様式の変化や健康への無関心が大きな要因だと考えられています。
平成27年度国民医療費の概況:総額42兆3644億円(前年度比1兆5573億円増)、年齢階級による人口1人あたり国民医療費をみると65歳未満の男性は18万6400円、女性は18万3300円であるのに対して65歳以上の男性は79万2400円、女性は70万3400円。
診療種類別国民医療費は、医科診療医療費30兆0.461億円(構成割合70.9%)、そのうち入院医療費は15兆5752億円(同36.8%)、入院外医療費は14兆4709億円(同34.2%)。
歯科診療医療費は2兆8294億円(同6.7%)、薬局調剤医療費は7兆9831億円(同18.8%)、入院時食事・生活医療費8014億円(同1.9億円)、訪問看護医療費は1485億円(同0.4%)、療養費等は5558億円(同1.3%)となっている。※療養費5558億円のうち、はり・きゅう394億円、マッサージ700億円、柔道整復3789億円
このことについていち早く取り組んでいた国がアメリカです。
1970年代のアメリカでは国民医療費が毎年高騰(国家予算14%)するなか医療費削減の経済的な効果を期待して政府も注目。
1992年には国立衛生研究所、代替医療局に国家予算が投じられて研究されるようになります。
そして翌年93年にはハーバード大学のD.アイゼンバーグの有名なレポートが出されます。
当時の発表では、100万人が鍼灸を受け、5億ドル(600億円)を支払っていたとされていて、また1万人の鍼治療者が存在して1500万人が一度は鍼治療を受けたことがあるそうです。
この中で自費払いが多かったことは国民の自己健康管理意欲の現れであり、もうひとつの治療への関心と期待をあらわしているものとして、医師への警告として受け止められたそうです。
一方で日本は医療の質が世界最高レベルでありこの30年あまりで「防ぎえる死」を確実に減らしているのにも関わらず「受けられる医療に満足していない人」が多い理由は何でしょう。
そこには「当たり前の医療」の形があることが想像できます。
2012年にアメリカ内科専門医認定機構財団が「不要かもしれない過剰な検診や、無駄であるばかりか有害な医療を啓発していこう」と呼びかけ、日本でも2016年にチュージング・ワイズリー・ジャパンが発足しています。
今後この国に必要になるものは「たくさん検査してもらうと安心」「薬は処方されて当たり前」という受け身姿勢ではなく積極的な健康への取り組み(セルフィメディケーション)、つまりヘルスリテラシーを身につけることです。
それが国民医療費の削減につながり、当たり前の医療からの脱却になるのです。
1970年代に世界中の人々が病院で得られる正統派医療の限界を深め、自分が納得のいく医療を探そうと模索し始めたこととは逆行する日本において今急ぐべきこと。
中国古代の医学書『難経』には「上工(優れた医師)は未病を治し、中工は已病(すでに発症した病気)を治す」とあり、「病気を予兆によって知り予防する」のが治未病の考え方だと書かれています。
このことは治療する側への言葉ですが、健康維持や病気予防という角度から見れば医療財政の破綻を回避する鍵になるはずです。
人生80年時代から人生100年時代の到来を迎え、リタイア後は余生ではなく次の40年のスタートになります。
そのためにどのように生きるか。
元気に自立して過ごせるには当たり前の医療から一歩前に進むことです。
治療から予防へのシフトなのです。